お疲れ様です。竹重です。
ここのところ新型肺炎によるサプライチェーンの停滞の影響で調整が進んでいた世界の株価ですが、ここにきて新たな材料である「原油安」により、3月10日の日経平均は1000円以上、5%を超える下落となりました。NYダウは一時前週末比2000ドル超の下落となりました。
現在の状況としては、GDP-6%超え(日本)→新型肺炎の流行(中国)→新型肺炎の流行(米国、欧州)→原油安(サウジ、ロシア発)というように、悪材料が連続して出てきている状況です。あたかも2019年9月からの上昇(米中融和期待、業績期待、科学技術の発展期待)と方向は逆ながらも同じ状況ですが、こういった状況では、材料が出尽くしになりにくく、方向が一方的になりやすいので注意が必要です。
さて、今回の原油安の原因としましては、大きく2点があげられます。
・OPECとロシアなど非加盟国との協調減産の失敗
・サウジアラビアによる原油の増産
今回の決裂は、原油シェアで中東や米国に劣るロシアからの動きであるようです。ロシアとしては、これまでの協調減産にもかかわらず、世界の景気不安などから原油が下落傾向にあったことを踏まえ、あまりうまみがないと判断した可能性があります。
また、重要な視点として、ロシアは自国の原油シェアを伸ばしたいと考えているということがポイントです。そこでネックとなるのが、アメリカのシェールオイル企業群です。
現在は世界有数の原油産出国となったアメリカですが、その内実は、聞こえほど華々しいものではありません。アメリカでは、中東と異なり、ちょっと掘れば原油がわいてくるという状況ではありません。ではどのように原油を採取するのtかというと、岩を砕き、特殊な薬剤を用いて、しみだしてくる原油を採取するという方法を取ります。これがシェールオイルというわけですが、単に地中の原油を掘り出すのと違い、コストが高くつきます。そのため、米国のシェールオイル企業の債権は、ほとんどがジャンク債(高リスク高利回り債)として扱われます。
さて、米国のシェールオイル企業は、その高コスト体質から、中東やロシアの石油企業に比べ、原油価格の採算分岐点が高くなってしまっています。これがいくらかというと、諸説あるのですが、おおむね40~50ドル程度なのではと言われているようです。
そこで、ロシアとしては、協調減産を拒否し、原油価格を押し下げることで、一時的に自らの懐が痛もうとも、強力な競合相手であるアメリカのシェール企業をつぶしにかかっているのでは? という見方もできます。サウジも増産に踏み切っていますので、原油価格は当面大きな下げ圧力に見舞われますから、これはあながち甘く見ていいリスクではなさそうです。
もし米国のシェールオイル企業が連鎖的に倒産ということになりますと、それら格付けの低いジャンク債を大量に買い付けているところまで破綻の可能性も出てきます。このような、低格付け企業向け融資をまとめて証券化したローン担保証券をCLOと呼びますが、ここのところの金融緩和による世界的な利回り低下、カネ余り状態の影響で、高リスクでも利回りを求めてCLOを買い付けている組織は増えています。これらを大量に買っている組織で有名なところとして、われらが日本の農林中央金庫も有名です。(世界の10%ほどといわれる)
現在の大幅下落は、これらの最悪のリスクを織り込みに行っているといえましょう。
さて、日経平均の状況ですが、PBR1倍ラインの21181円を大きく下回り、PBR0.9倍程度まで下落しています。あくまで上記のような最悪のリスクがあらわれないという条件付きではありますが、かなり割安な状況です。各国の財政出動などにも期待がかかりますが、買い方に回る場合は、米国のシェール企業の動向やニュースを注視しておきましょう。
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